某年夏、私は友人と一緒に古い海辺の町に旅行に出かけた。この町は、その美しいビーチと歴史的な建物で知られていた。私たちは、町の中心にある古いホテルに宿泊することにした。
初日は楽しく過ごし、夕方になってホテルに戻った。部屋に入ると、何となく落ち着かない感じがした。友人は気にしないように言ったが、私はなぜか部屋の雰囲気に引っかかるものを感じていた。
その夜、私は不思議な夢を見た。夢の中で、私はホテルの廊下を歩いていた。廊下の奥には扉があり、その扉から何かが私を呼んでいるようだった。夢から覚めた時、私はその扉が現実にも存在することに気づいた。それは私たちの部屋の隣にあった。
好奇心に駆られ、私は友人を誘ってその扉を開けてみることにした。中にはホコリだらけの古い部屋があり、まるで長い間誰も使っていないようだった。部屋の中央には、古びた日記が一冊置かれていた。
日記を開くと、50年前のもので、若い女性の旅行記が書かれていた。彼女はこの町を訪れ、恋に落ちたが、その恋人は海で事故に遭い、亡くなってしまったと記されていた。彼女はその悲しみに耐えられず、この部屋で命を絶ったと書かれていた。
日記を読んだ後、部屋の雰囲気が一変した。急に寒くなり、部屋の隅で何かが動くのが見えた。私たちは恐怖に駆られて部屋を出た。
その夜、私たちは部屋で何かが囁く声を聞いた。声は「帰って」と繰り返し言っていた。私たちは翌日、急いでそのホテルを離れた。
その後、町の図書館で調べたところ、その部屋で若い女性が亡くなっていたことが分かった。ホテル側はその部屋を封鎖し、使われなくなったという。
今でも、その部屋で起きたことを思い出すと、背筋が凍るような恐怖を感じる。