友人の大学同期会からの帰り道、夜の山道をドライブしていた。同期会は郊外の山奥のペンションで行われ、楽しい時間を過ごした後、夜遅くに一人で帰路についた。
山道は曲がりくねっており、夜間の運転はいつも以上に注意が必要だった。周囲は真っ暗で、車のヘッドライトだけが道を照らしていた。
しばらく走っていると、ふと道路脇に人影が見えた。ヒッチハイカーかと思い、車を停めた。若い女性が立っていた。彼女は青白い顔で、「少し先の村まで乗せてほしい」と言った。何となく不安を感じつつも、同情から彼女を車に乗せた。
彼女はほとんど話さず、窓の外を見つめていた。たまに小さな声で「もうすぐです」とつぶやいた。彼女の指示に従い、山道をさらに進んだ。
やがて、彼女は「ここでいいです」と言って車を降りた。彼女が指差した場所には、古びた祠があったが、村の気配はなかった。不気味に思いながらも、彼女に別れを告げて車を発進させた。
その後、何かがおかしいと気づいた。道が見覚えのある景色ばかりを繰り返している。まるで、ループしているかのようだった。時計を見ると、針は動いていない。携帯電話を見ても、電波はなく、時刻も変わらない。
恐怖が増す中、私は車を急いでUターンさせた。しかし、どれだけ走っても、同じ場所をぐるぐると回っているように感じた。
突然、ヘッドライトに再び女性の姿が映った。彼女は道路の真ん中に立っていた。車を停め、彼女に近づくと、彼女の顔は震えていた。彼女は「帰れない」とつぶやき、消えた。
その瞬間、周囲が一変し、慣れ親しんだ道路が現れた。時計も動き出し、携帯電話にも電波が戻った。私は急いで家に帰った。
家に着いてから、その地域のことを調べた。昔、その道路で女性が事故に遭い、亡くなっていた。事故現場は、私が彼女を降ろした祠の場所だった。
以来、私はあの山道を通らないようにしている。でも、時々、夢にその女性が現れる。彼女はいつも同じ言葉を繰り返す。「もうすぐです」と。